アーサー・ランサムに出会ったのは小学校二年の時だったと思う。
英語を習いに通っていた先生の家では家庭児童文庫をしていて、部屋中が子供の本で埋め尽くされていた。
小学校に入ってしばらくしてからようやく絵本を卒業した私は、そのころそれまでとは打って変わって分厚い本を征服する喜びを追及していた。何ともいやらしい子供だが、本が厚ければそれだけ楽しかったということもある。
岩波書店のアーサー・ランサム全集をごらんになったことのある方はわかるだろうが、この12冊の本は、1冊の厚さが何センチにも及ぶ、児童書としてはかなりの強敵だ。
最近の版では紙が良くなったこともありいくらかは薄くなったが、これが灰色の本の塊として本棚にあれば、その存在感といったらかなりのものだ。
一冊目のタイトルはなんともとっつきにくい。
「ツバメ号とアマゾン号」。
これでどんな本なのか子供がわかるかといえば、そんなことあるわけもない。
大して面白くもなさそうだと思いながら、それでも見開きの手書き風の地図に魅了され、私はその本を借りて帰った。
その日から、私にとって英語の授業は二の次になってしまった。
子供たちの多彩な冒険の日々にすっかり引き込まれてしまったからだ。
授業中に次に借りて帰る本に夢中になって叱られることもたびたび。
いつかあの湖に行って、ヨットに乗り、あの子供たちに会いたい。
それが私の夢になった。
このページはその夢の物語だ。